燃料電池車の仕組みと特徴
燃料電池車は水素自動車とも呼ばれ、ガソリンではなく水素を燃料として走ります。ガソリン車がガソリンを燃料にしてエンジンを動かすのに対し、燃料電池車は水素を燃料にしてモーターを回転させて走るのが特徴です。
水素から動力を得る仕組みには大別して二つあり、水素を直接エンジンで燃焼させるタイプと、水素と酸素を化学反応させて燃料電池を発電し、動力を得るタイプがあります。とくに燃料電池を使っているタイプを区別して燃料電池車と呼ぶのが一般的です。電力によってモーターを動かして走るという点では、電気自動車に近い仕組みだと言えるでしょう。
電気自動車とはここが違う
燃料電池車(fcv)と電気自動車(ev)の決定的な違いは、燃料電池車は燃料電池を、電気自動車は蓄電池を搭載しているということです。燃料電池は電力を自ら発電できますが、蓄電池には発電する機能はありません。 その名の通り電力を蓄えておき、それを用いてモーターを動かすため定期的に充電する必要があります。
さらに、電池の違いにより他の部分でもいくつか特徴の違いがあります。
ひとつは航続距離の違いです。 電気自動車が400kmほどなのに対し燃料電池車は約650kmから750kmほど走行可能で、燃料電池車の方が長い距離を走れます。次に燃料の補給にかかる時間です。燃料電池車はガソリンと同じように短時間で補給できますが、電気自動車では電力が0%の状態からフル充電する場合、家庭用充電では一晩ほどかかります。急速充電ができるものもありますが、それでも約10分~1時間くらいかかってしまうでしょう。
補給方法についても違いがあり、 電気自動車はステーションだけでなく家庭でも充電可能ですが、燃料電池車は専用の水素ステーションでないと補給できません。また、水素の貯蔵には厚くて頑丈な高圧タンクが必要となり、その分、電気自動車よりもコストが高くなるという違いもあります。
このように、燃料電池車と電気自動車は電力によってモーターを動かして走るという点では共通していますが、それ以外の部分では違う点も多いです。選ぶ時はその違いに着目すると失敗なく選べるでしょう。
燃料電池車のメリット
普及率がまだ高いとは言えない燃料電池車ですが、各自動車メーカーが長年研究開発を続けてきただけあって多くのメリットがあります。
その代表例と言えるのが、二酸化炭素や有害ガスを排出しないこと でしょう。燃料電池車は水素と酸素の化学反応で発電しており、その過程で排出されるのは水だけです。ガソリン車のように一酸化炭素や浮遊粒子状物質などの有害ガスを排出し、環境を汚染することもありません。燃料電池車がクリーンで環境に優しい車と知られているのはそのためです。
また、ガソリン車と比べるとエネルギー効率が高く、その違いは2倍以上だと言われています。 補給自体に時間がかからないのもあり、補給の手間が少ないのもメリットの一つです。補助電源を併用することも容易で、航続距離の短い電気自動車と比べて長距離移動も安心できます。
他にも、発電やモーター駆動では大きな音は発生せず、ガソリン車と比べて走行時の音が静かです。エンジン音が気になる方には大きなメリットだと言えるでしょう。
燃料電池車のデメリット
メリットの多い燃料電池車にもデメリットはあります。
第一に普段の利用で無視できないのが水素ステーションの数です。 電気自動車の充電設備に比べてもまだまだ設置数は少なく、県によっては一つも存在しないこともあります。近くに水素ステーションがなければ、燃料電池車を利用するのは難しいでしょう。これは燃料電池車の普及を妨げている大きな問題の一つです。
また、燃料電池にはレアメタルが使われており、製造コストが高いために車両価格自体が高くなっています。 国からの補助金を考慮しても、一般的なガソリン車と比べて車両価格が高くなってしまうのです。さらに、燃料となる水素も貯蔵や搬送コストが高いため、価格が高くなっています。
さらに、ガソリン車ほどの航続距離はまだ実現できていないのも大きな課題だと言えるでしょう。
他にも、メリットで紹介した音が静かだという点も、歩行者から見れば近付いているのに気付きにくいというデメリットになってしまいます。走行中に二酸化炭素は排出しないという点でも、水素の製造過程では二酸化炭素が排出されているため、完全に二酸化炭素を排出していないというわけではありません。
メリット、デメリットを踏まえて検討しよう
燃料電池車には多くのメリットがある反面、無視できないデメリットも存在します。
ですが、これらの重要度は住んでいる地域や経済状況によって変わってきますので、自分にとってメリットの方が大きいのかデメリットの方が大きいのかが大切です。
今後の発展にも注目しつつ、これらを踏まえた上で燃料電池車の購入を検討してみてください。